職場のトラブルは、これまで裁判で解決するのが一般的でした。しかし裁判には多くの時間と費用がかかります。裁判は原則公開で行われ、「勝った」「負けた」の関係を生みだし、円満な職場関係の回復には程遠いものでした。
そこで、裁判になる前(裁判にならないように)の解決手段として、ADR(裁判外紛争解決手続)が活用されるようになっています。
ADRは、個々の経営者と労働者との間で発生するトラブル(個別労働関係紛争)を対象に、都道府県労働局の「紛争調整委員会」または社会保険労務士会の「社労士会労働紛争解決センター」が、当事者から意見を伺い、双方が納得できる和解案を示し、解決するものです。
ADRは裁判に比べ、「簡易・迅速・低廉」に、トラブルを解決するための手続です。申立ての手続が簡単で、手続も原則1回程度で終了することを目的としています。また、非公開であることも大きな特徴です。更に、手続に要する費用も、手数料程度ですので、気軽に利用できる手続として今後ますます活用されていくでしょう。
社労士会労働紛争解決センター熊本とは
対象となるトラブルの範囲
解決センターで対象とするのは、個別労働関係紛争だけです。つまり、労働契約(解雇や出向・配転に関することなど)やその他の労働関係(職場内でのいじめ、嫌がらせなど)に関する事項についての、個々の労働者と事業主との間の紛争が「あっせん」の対象となります。したがって、労働組合と事業主との紛争(集団的労使紛争)、労働基準法等の労働関係法上の法規違反や労働者と事業主との間における私的な金銭貸借問題等は対象にはなりません。
また、解決センターでは、募集、採用に関係した紛争及び退職後に生じた事業主との間の紛争(但し、解雇・雇い止めを原因とする紛争を除く)は対象外になります。
集団的労使紛争は、熊本県労働委員会に相談することが一般的ですし、労働関係法規違反は労働基準監督署に相談・申告することが問題解決への近道でしょう。
手続きの流れ
①申立書の内容を審査して、解決センターで対象とする事案であれば受理されます。
②申し立ての内容を相手方へ通知し、相手方があっせんに応ずる意思があるか否かを確認します。
③相手方からあっせんに応ずるとの意思表示があった場合、当事者の都合を確認して、解決センターが期日(あっせんを行う日)を指定し、7日前までに通知します。
④期日前に、相手方から、答弁書(申し立ての内容について認めるか、あるいは否認するか、又は、申し立てについての反論とその理由を簡潔に記載した書面)及び紛争に関する資料を提出していただき、1回の期日で和解の成立を目指します。ただし、紛争の内容が、複雑困難な場合等、特段の理由があるときは、複数回の期日が開かれることもあります。
⑤和解が成立した場合は、あっせん委員が作成する和解契約書に当事者双方及びあっせん委員が立会人として署名押印し、和解契約書を作成してあっせん手続きは終了します。
⑥①ないし⑤の期間は、およそ1ヶ月を見込んでいます。
⑦相手方が、あっせんに応じない場合は、そこであっせん手続きは終了します。
申し立ての費用
申し立て費用がかかりません。解決センターで和解が成立した場合、1件あたり手続費用として解決金の2%(消費税含む。)が必要です。(例えば、事業主からのセクハラ被害の防止について申し立て、和解の内容として、セクハラの即時中止と今までの精神的苦痛に対する慰謝料の請求の2つについて申し立ても1件として扱います。)
なお、当センターでは、解決金が発生した場合のみ、手続費用をいただきますので、
- 相手方が申し立てに応ずる意思がない場合
- あっせんにより和解が成立しなかった場合
- 和解が成立しても解決金は発生しない場合
等は手続費用はかかりません。
特定社会保険労務士とは
特定社会保険労務士は、社会保険労務士がADRに関する研修を受け、国家資格に合格したADRのスペシャリストです。
豊富な経験と知識で依頼者(経営者もしくは労働者)に代わり、手続き・解決まで導きます。
依頼者のニーズにあわせて
- 申立てに関する相談及び手続
- 代理人としての意見の陳述
- 相手方との和解のための交渉及び和解契約の締結
を行います。
経営者にとってのメリット | 労働者にとってのメリット |
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職場のトラブルをADRで解決することで、裁判になった場合の企業イメージの低下や企業リスクを回避し、経営者の方が本来の業務に専念できるようにサポートいたします。 | 解雇やセクハラなど、深刻な職場のトラブルを個人で解決するのは、肉体的にも精神的にも大きな負担になるものです。 特定社会保険労務士は、依頼者が安心・納得いただけるように、トラブル解決まで親身になってサポートいたします。 |